日本を訪れる外国人が増加を続ける中、観光以外にも東京に熱い視線を注ぐ人たちがいます。東京・台東区のJR御徒町駅周辺には今、世界各国から宝飾品を仕入れるバイヤーが訪れ、中でも、日本に眠る“ある宝石”が大量に買われています。
貴金属を扱う企業が1000社以上集まっている御徒町駅周辺は、古くから「宝飾の街」として栄えてきました。御徒町の駅から一本入った通りを歩いてみると、真珠やダイヤモンドを店頭に並べる宝飾店が軒を連ねています。その御徒町に近年、変化が起きています。創業40年以上の地元宝飾店、ミユキの古屋聡さんは「世界各国からバイヤーが来ている。3年ぐらい前からちらほら、2年ぐらい前からはかなりの頻度で来ている」と話し、質の良い宝飾品を求めて世界中のバイヤーが頻繁に訪れるようになったといいます。
2012年ごろから円安が進み、外国人バイヤーが日本で宝飾品を仕入れやすい状況になりました。バイヤーの需要が増えるとともに宝飾品の買い取り価格が上昇し、日本国内に眠っていた上質な宝石が市場に流通するようになりました。中でも、ダイヤモンドの買い取り価格は5年前と比較しておよそ1.5倍の高値で推移しています。外国人バイヤーは「今の日本は“買い取りバブル”」ともいいます。
買い取りを行うゴールドプラザの川崎拓さんは「最近は、日本のバブル時代にダイヤモンドを買った、あるいはもらった人が、もう使わなくなったと持ち込む人が多い。日本のバブル時代の商品はすごくいいものが多い」と話します。そして、そのバブル時代のダイヤモンドを大量に買い集める“ある国”のバイヤーがいます。それは「インド」です。「数千万円単位で売却することもある」(川崎さん)といいます。都内で6店舗を展開するこの貴金属店では、ダイヤモンドを購入していくバイヤーのおよそ半分がインド人だといいます。
現状についてインド人バイヤーのムキム・リテシュさんに話を聞きました。リテシュさんはピンクダイヤを見せながら「このダイヤモンドは品質がいい。小さなものでも200万円はする」と話します。
御徒町で大量に購入される中古のダイヤモンドは、インド人が持つ技術で新たに生まれ変わります。リテシュさんは「インド人が買ってリカット(再加工)して、新しいカットにしてまた売る。その時にクラリティー(透明度)も上がる」と説明した上で「まだまだ、インドは他の国よりもノウハウが高い」といいます。ダイヤモンドの加工技術が世界一といわれるインドは、世界のダイヤモンド加工の大部分を占めているといいます。加工される前のダイヤモンドと、インドで加工されたダイヤモンドを比べると、カットがより洗練され、一層輝きが増しているのが分かります。
リテシュさんは「例えば500万円で買ったら、バイヤーとしては600万円ぐらい欲しい。そして600万円で売ったら、買った業者は再びリカットして700万円ぐらいで売るのでは」と話しています。インド人バイヤーは2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて日本の宝飾業界が今後も成長するとみていて、宝飾の街・御徒町にはさらに多くのバイヤーたちが集まりそうです。